【ユーザーストーリー】HIROSHI WATANABE x BnA_WALL・Keigo Fukugakiインタビュー『五感につながるような体験を音を通じて表現できる』
- 7月22日
- 読了時間: 20分

日本を代表するミュージックプロデューサーのHIROSHI WATANABEさん、そして東京・日本橋のアートホテル「BnA_WALL」がADAM Audio D3Vを通じてコラボレーション。2025年8月から2026年7月までの期間限定でBnA_WALLの5室にD3Vが設置されています。
BnA_WALLでの宿泊をさらなる没入体験に深化させる試みとなる本企画では、HIROSHI WATANABEさんが実際にD3Vを使用して楽曲を制作。それぞれ環境の違うBnA_WALLのユニークなアートルームに配慮して緻密に構成された楽曲は、期間中一部客室で鑑賞することができます。
このコラボレーションが実現した経緯やD3Vの魅力、そして音で空間を満たすことで生まれる新たな宿泊体験について、今回、HIROSHI WATANABEさんと、BnA_WALL創業メンバーでデザインディレクターを務めるKeigo Fukugakiさんに語っていただきました。
コラボレーションが実現するまで
──今回のコラボレーションはどういった経緯で実現したのかを教えていただけますか?
Keigo Fukugaki:きっかけは、ホテルのコミュニティマネージャーを務めるイシガミが個人的にD3Vを持っていて、ロビーのDJブースのモニタースピーカーとして使っていたことでした。彼は「無重力セッション」というイベントを通じて、このスピーカーのファンになり、BnA_WALLでも「これを使って何かイベントをやろうか」、という軽い気持ちで話が始まったんです。
その流れで無重力セッションのオーガナイザーの早雲さんとお話しする機会があり、意気投合して、僕の長年の夢をその場で伝えました。我々はユニークなアート体験を宿泊しながら独占できる空間作りをしているのですが、五感全てで体験できるお部屋がまだ少ないことが、ずっともどかしかったんです。そこですでにあるお部屋に、そこに特化した音楽を作曲家と一緒に作るプロジェクトをやりたいという夢を伝えたところ、「やりましょう」とその場で言ってもらえました。それが今回のプロジェクトが始まった経緯です。
──それまでお二人は面識はなかったのですか?
Keigo Fukugaki:それまではなくて、このプロジェクトをきっかけに早雲さんから「HIROSHI WATANABEさんどうですか?」とご提案いただきました。我々からすると大ファンでもある大物アーティストですから、「そんな方にお願いできるんですか?」と驚きましたが、ぜひということでお願いしました。
──そのお話を受けて、HIROSHI WATANABEさんは最初にどんな印象を持たれましたか?
HIROSHI WATANABE:話を聞いた瞬間にこんな面白い機会はないし、絶対にやりたいと思いました。D3Vをホテルの一室に設置して音楽を流すという贅沢さもそうですし、話を聞いた段階でもうイメージができていたんです。
それとホテルの客室にはそれぞれ違うスタイルがあることは知っていたので、いろんなバリエーションに馴染む音でなければいけない。宿泊するお客さんがその客室を堪能する時に、アーティストが作り上げた客室のムードを壊さず、音が浸透できるものであってほしいと考えていました。なので、スタジオでD3Vを鳴らしながら、実際に客室で音と空間が一体化した時にどんな形が気持ちいいのかをイメージして制作を進めたんです。そういったこともあって、初めてこちらの客室で鳴らした時、そのイメージと全くブレがなかったので、すごく良い手応えがありました。
小音量でも、空間が豊かに満たされる
──D3V自体は以前から使用されていたのですか?
HIROSHI WATANABE: 発売されてからそこまで時間は経っていませんが、制作前からこのスピーカーの音には馴染みがありました。その中で特に気に入っているのは、一般の人の手に届きやすい価格でありながら、音のクオリティが非常に優れているところです。見た目からは想像できないレベルの音を出すので、この部屋に設置するという意味では十分すぎるポテンシャルがある。それをフルに活かした音楽を作りたいと思いました。
──どのようにD3Vのポテンシャルを活かされたのですか?
HIROSHI WATANABE:このスピーカーが面白いのは、低い音が方向を主張せず、部屋全体にふわっと広がっていくところです。高い音から低い音までどこにも無理がなくて、小さな音で鳴らしているのに、空間にちゃんと存在感が立ち上がってくる。コンパクトなのにこの音圧が実現できているのも魅力ですけど、僕がよりすごいと思うのは、すごく小さい音で鳴らしているのに、低い音から高い音まで豊かに鳴っているように聴こえることなんです。
今回のプロジェクトでは、聞き取りにくい低い音もあえて意図的に入れていますが、この音量でも十分に聞こえている。大きな音を出せないホテルの部屋で、小音量での心地よさをフルに活用できるのは本当にありがたいですね。
──Fukugakiさんはこのスピーカーに対してどういった印象をお持ちですか?
Keigo Fukugaki:DJブースで使っている時から聴いていましたが、音量を下げても音に存在感があるだけでなく、耳馴染みもよく、ホテルの中でリラックスしながら聴ける音質だと感じていました。
お客様がアートを体験する中で、五感につながるような体験を音を通じて表現できる。それが今回のプロジェクトでいちばんやりたかったポイントです。単純に音楽が流れているのではなく、お部屋に入った瞬間から音が空間を満たしている。小さな音量なのに体で低音を感じるくらいの音質で、まだ全体が見えていない状態からアートの空間に入ったという体感を持てる。こんな新しい体験のレイヤーを作れるとは正直想像していなかったので、ADAM Audioさんにはすごく感謝しています。
──ホテル側としては楽曲に対する要望はあったんですか?
Keigo Fukugaki:全然違う部屋がたくさんある中で、全てに馴染む音楽が本当に存在するのか、我々にはわからない領域でした。それでも、五感で感じたり、いろんなシーンで聴くことを想定していただけないかという無理難題をお願いしました。
ここには誕生日をお祝いしている方もいれば、リラックスしに来た方、日本観光でテンションが上がりきった状態の方など、いろんな方が泊まっています。それでも一度空間をリセットして、この体験に戻ってこれるような音楽を作れるかどうか。それだけをお伝えしたところ、HIROSHI WATANABEさんとプロジェクトチームの方々が全てをくみ取って実現してくれました。
──そういったホテル側からの要望を受けて、HIROSHI WATANABEさんとしてはイメージの修正などはありましたか?
HIROSHI WATANABE:正直、何もなかったですね。求められていることは全部理解できましたし、想定内のことでした。完成させるためのエネルギーは必要でしたが、シナリオ作りは僕にとってすごく自然なプロセスでした。
そもそも音自体が空間演出であるということは常々考えていることなので、一つの部屋の中で完結させて、そこに来るお客さんのイメージをシミュレーションすること自体が楽しかったんです。「これはハマるだろうな」「気持ちよく錯覚を起こすだろうな」「部屋にいるけど東京にいることも忘れるだろうな」とか、自分の中でポイントを押さえながら、必要な音を組み上げていったらこうなったという感じです。
──今回の楽曲は30分〜40分ぐらいの長さですが、この長さを選んだ理由はありますか?
HIROSHI WATANABE:自然体で、無理なく一つのストーリーが始まって終わる長さを意識しました。短すぎるとループした時にどこかで飽きてしまう。時間の流れを忘れられる長さで、あまり起承転結を感じないものにしたかった。最初から何分にするという絶対的なこだわりがあったわけではありません。
Keigo Fukugaki:時間に関しては我々からの具体的な要望は全くなかったですね。ループをかけることと、どのタイミングでお客さんが入ってくるかわからない中で鳴らしっぱなしにするという運用面だけお伝えしました。それで組み上げていただいたものが、想像以上の仕上がりだったので嬉しかったです。
音で空間を満たすということ
──今回の企画では5室にD3Vを設置されました。それぞれの客室の特徴を教えていただけますか?
Keigo Fukugaki: 今いるこのお部屋は「桜色の絨毯の部屋」というタイトルで、コリュさんという若い女性作家が手がけました。ロマンチックで女性的な可愛らしさが充満している、ソフトなお部屋で当ホテルには2室あります。

もう一つは正反対で、モダンアートのグラフィティ出身の作家が手がけた「The World After Five Minutes」という、これも2室あるお部屋。グラフィティでペンキまみれにした部屋の写真が、幅3.5メートル、縦2.2メートルの等身大で飾ってあり、ミニマルなグレー調で、モダンでかっこいい男性的な空間です。
あとはホテルのスイートにあたる大きなお部屋で、ストリートアートのSIDE COREさんが手がけた「昼がみた夢 - daytime's daydream -」です。外にいるかのようなインダストリアルなタイルを床全面に貼った、少し冷たい印象のお部屋です。それぞれ全く違うジャンルのものを選びましたが、どのお部屋でも体感として伝わる音質と音楽を楽しんでいただけます。
──客室ごとにコンセプトが違うので、音楽の感じ方も変わってきそうですね。
Keigo Fukugaki:選ぶお部屋によってお客様の性質も少し違いますが、モダンアートホテルである当ホテルを選んでくれる方々には「アートを感じる」という共通の体験を提供させていただいています。この音楽とスピーカーは、そこをしっかりと包み込んでいるんじゃないかと思いますね。例えば、ロマンチックな部屋でも、心を落ち着かせて深く空間を感じ取るという体験に対して応えている。違う感情を生む体験であっても、体験をするということに対して、このスピーカーと音楽が答えている気がします。
HIROSHI WATANABE:なので、今回はあえて音がガツンと前に出てくる音楽ではなく、空間に溶け込む音楽を作りました。それぞれのアーティストのファンであれば作品に目が留まりますし、その部屋で過ごすことを喜ばれると思います。でも音が部屋全体に満ちている状態になると、何度も同じ部屋に滞在した人でも、新たな空間として感じられるというか。
作品だけでなく、部屋全体を感じ取れるような感覚に変わる。そのための音でないとすごくもったいない。既存の音楽や前に出てくる音楽だと、それが台無しになってしまうんですよね。だからこそ、空間全体を埋めるという意味で、今回作った音楽はすごく大事な役割を担っているんです。
お客さんはまず視覚的に部屋を選びますよね。音は予約時には聞けない。でも実際に音がある状態で滞在すると、視覚だけでなく聴覚も含めた五感で部屋のムードを感じ取れる。聴覚を刺激することで、感じなかった匂いすら強く感じ出したりと、他の感覚もさらに敏感になる。これはそういう音像を立ち上げてくれるスピーカーがあって、はじめて成り立つことだと思います。
Keigo Fukugaki:五感を通じてお部屋を探っていく体験が始まるという意味では、聴覚は入室した瞬間から感じるものなので、説明なく没入できます。普段いろんなお客様が来る中で、不思議な部屋にワクワクして入っていく人もいれば、オドオドしながら入る人もいる。反応はそれぞれ違うんです。
でもこの温かい音に包まれて入ると、全員が安心して入ってくる。それが新しい体験のベースになっている。音によってその差が整えられているんじゃないかと思います。
HIROSHI WATANABE:それは絶対にあると思いますね。音の内容もそうですが、それを再現できるスピーカーとの相乗効果でバランスがいい。低い音から高い音まで綺麗に出ていて、嫌みなく溶け込む音なんです。

普段はデザインとして見えない部屋の角や隅、ラインまで、音があるだけで全部デザインに見えてくる。無音の時と音がある時とでは、見え方も感じ方も全く違う。要は感情が揺さぶられるわけですが、それを変に強烈に誇張するわけではないので、お客さんには室内でただ佇むだけでドラマが起こるような感覚になってもらえたらベストですね。
──客室自体にアートの主張がある中で、音が前に出すぎない音楽だからこそ空気感として馴染んでいる。アーティストのファンからしてもノイズにならず、むしろプラスに感じられる良さがありますよね。
Keigo Fukugaki:このホテルの全てのお部屋の設計に関わっただけでなく、アーティストと一緒に作る段階から携わってきました。そんな全てを知り尽くしている僕からしても、音楽が入ってからお部屋が全く違うものになったと感じています。いろんなものが違うように見えてくるという体験を、個人としても実感しました。
──客室としての可能性が広がったような感覚でしょうか?
Keigo Fukugaki:本当にそうです。オンラインで予約する時は視覚でしか選べませんから、そこをさらに超えていく体験を提供できている。この厚みのある体験を追加できたことに我々としても満足しています。
特に東京という音が充満している街にいると、ホテルの部屋って意外と静かで、ほぼ無音に近い。逆にソワソワするんですよね。チェックインしてお部屋に入り、荷物を置いてシーンとなると「外出ようか」となる。ロビーに行ったり、レストランの予約を取ったり、常に忙しくなってしまう。でも音楽があると「もう少し部屋を体験してみよう」というきっかけになると思っています。
──確かに部屋にいたくなる空気感がありますね。アンビエント調の音楽が体に染みてくるような感覚があります。その分、無音になった途端に現実に戻される感じもありますが。
Keigo Fukugaki:さっきまで安心できる柔らかい空間にいたと思っていたのに、音がなくなった瞬間、会話の反響も聞こえてきて、硬い空間に感じるというか。音楽があるのとないのとでは、体験が全く違ってくると思います。
HIROSHI WATANABE:これはスピーカー自体の特性も関係しています。当然、居心地の悪い音だって作れるわけで、いくらでも試行錯誤できる。だからD3Vの特性を考慮した上でこういう音楽を作れて良かったと思います。人は嫌な音が耳から入ると、かなり不快になる。音は簡単に操作できるものだからこそ、心地よさだけを抽出することに気をつけました。

音が支える、ここだけの宿泊体験
──実際に宿泊された方からはどういった反響がありますか?
Keigo Fukugaki:初めて宿泊される方からすると、これが当たり前という感覚なんですよね。「アートホテルとはこういうもの」という定義になっている。「素晴らしかったです、リラックスできました」「アートホテル、素晴らしいですね」といった声をいただいています。
比較対象を持った時に初めて、このお部屋の音像や音楽の素晴らしさがわかるのかもしれませんが、今は「これが当たり前」という最上級の評価をいただいている状況です。だからこそ、他では絶対に味わえない体験だということを、より多くの人に知ってもらいたいですね。
──アンケートの回答で特に印象に残っているものはありますか?
Keigo Fukugaki:「音楽をつけたまま寝ました」という方が何人かいました。それってすごく気持ちいいということの証拠ですよね。予約した部屋にスピーカーとWATANABEさんの音楽が用意されていて、それをつけたまま寝るほどこの体験を楽しんでいる。ベッドサイドから低い音が体に届くので、心地よい振動を感じながら眠れるんです。
HIROSHI WATANABE:この反響はめちゃくちゃ嬉しいですね。それに贅沢ですよ。ベッドの両サイドに置いたスピーカーの音に包まれながら眠れるなんて、こんなに気持ちいいことはない。低い音は体に直接届いて、それより高い音は壁を回ってから耳に届く。寝ながらでも、めちゃくちゃ立体的に音に浸れるんです。
でも、これは作り手である僕が、お客さん目線になれなかったら絶対に無理な内容でした。自分がそこに滞在したらという感覚を持って、ずっと聴きながら作った結果、お客さんの声ともブレが全くなかった。それに尽きますね。
Keigo Fukugaki:もう一つ重要だったのは、D3Vのシンプルなインターフェースです。ホテルのお客様の中には機械が苦手な方もたくさんいます。だから、最初は想定外の操作をされて壊れたり、苦情になったり、夜中に呼び出されたりするリスクをかなり心配していました。
でも実際は、すごくシンプルでミニマルだし、ケーブルの数も少なく、綺麗に部屋に馴染んでいる。余計なことがないから音楽に集中できますし、ネガティブな感情が生まれないんです。
──オーディオ好きは音の良さだけでスピーカー選びがちですが、不特定多数が宿泊するホテルでは扱いやすさも重要なんですね。
Keigo Fukugaki:そうですね。企画開始から数ヶ月経ちましたが、運営側として苦情やトラブルがゼロというのは本当に素晴らしいことです。

HIROSHI WATANABE:作り手からすると「せっかく一生懸命作ったのにこんな小さい音量で聴いてるの?」と思うことってよくあるんです。でもこのスピーカーは小さい音でも「小さいじゃん」と思う必要がないくらい豊かな音が出る。音が小さいことを忘れられるというか、実際のボリュームを無視できる。そこは安心感しかないですね。
今回は小さな音量なのに、曲中でずっと鳴らしているものすごい重低音がちゃんと出ている。それがすごく嬉しいんです。無音になると落ち着かないという話に関連して言うと、そうならないようにあえて重低音を入れているのですが、それはこのスピーカーがその部分をきちんと描けるからこそやっていることなんです。表現しきれないスピーカーだと無駄な音域になってしまい、スピーカー自体に負担がかかって音が濁ってしまいます。
それに人は外を歩いている時、意識していないだけで、低い音から高い音までものすごい量の音を体で受け取っているんですよね。普段そういうものにまみれているからこそ、完全に閉じた空間や無音の場所に入ると、時に恐怖や不安を感じる。でも、低い音まで豊かに鳴らせると、音量が大きくなくても、外の世界との違和感が消えていく。普段意識していない低い音がそこにあるだけで、部屋の中と外の境目がふっと溶けるような感じがするんです。
──なるほど。普通のホテルのきれいでひんやりした部屋とは違う、この独特の空気感の正体はそこにあったんですね。
HIROSHI WATANABE:クラシックやアコースティック楽器の音楽が流れているのとは全く違う効果があります。さっきも言ったように、低い音に体ごと包まれているような感覚が、部屋の外と内側でシームレスにつながっているんです。外と地続きの音響的な厚みが部屋の中にも満ちているから、無音の部屋にありがちなソワソワ感がない。外にいても内にいても違和感がなく、どちらも心地よい状態になる。そうなると、自分が気に入って選んだ部屋であれば、なおさらじっくり滞在したくなると思います。
Keigo Fukugaki:そもそも独占できるアート空間を作りたかった理由は、じっくりと深く何かを感じる体験が世の中にほとんどないからです。アートギャラリーで10分くらい作品を見ていると「あの人買うのか買わないのか」という視線を感じたり、「そろそろどかないとダメかな」と思ったりする。どこかにとどまってリラックスして体験していい場所ってほとんど存在しない。
だから、そういった場所を作りたかったのでアートホテルを作ったのですが、それでも何かに追われている気持ちを完全に払拭することはできなくて。でも、今回の取り組みで、そこに対してもう一つのレイヤーを提供できました。なので、ホテルに足りなかったピースが埋まったという感じで、感謝しています。
アート体験の新しいスタンダードを味わってほしい
──最後に残りの企画期間中に泊まりに来てくれるお客さんへメッセージをお願いします。
Keigo Fukugaki:そもそも今回の企画を期間限定にしたのは、実験的にチャレンジできる環境を作りたかったからです。最初から常設として考えると、どうしても運用上のリスクが頭をよぎって、本当にやりたかったチャレンジを削ぎ落としてしまうかもしれない。だから、まずは期間を区切って、思い切り振り切ったものに挑戦できる形にしました。
そして、実際にやってみてこの取り組みが間違っていなかったと確信できたので、当初の期間を延長して、現在は2026年7月まで継続しています。アート体験の新しいスタンダードを提示できたと思うので、ぜひ多くの方にこの体験を味わいに来てもらえると嬉しいです。
HIROSHI WATANABE:お客さんにはなぜ心地よかったのかという答え探しをしないまま帰ってもらって全く構わないと思っています。「スタンダードに見せかけて、実はものすごくいろんな仕掛けに浸っていたんだ」と、後から気づいてもらえると、それはそれで面白いんじゃないかと。
ただ、もし音楽が好きな方が来られたら、しばらく鳴っている状態を味わったあとで、一度ボリュームを下げて無音にしてみてください。無音にした瞬間の落差で、それまでどれくらい密度濃く空間が音で埋め尽くされていたかが、よりはっきり実感できると思います。

Interviewer:Jun Fukunaga
Photographer:Leo Arimoto

■HIROSHI WATANABE a.k.a Kaito■
叙情的でメランコリックなシンセフレーズやメロディーをレイヤーする独自の作風は、時にダンサブルに、そしてビートレスなアプローチからアンビエントな世界観までを両立させる唯一無二のサウンドで知られる。世界中の多くのリスナーから支持を受け、国内外の レーベルから作品を多数リリース。2001年ドイツのレーベルKOMPAKTよりKaito名義で7枚のEP、8枚のアルバムをリリース。2014年ケルンにてWDRオーケス トラとの共演を果たし、2016年Derrick May主宰のTransmat Recordsから日本人初の「MULTIVERSE」をリリース。代表作として、交響詩篇エウレカセブンの挿入曲「GETIT BY YOUR HANDS」、 宮崎県の民謡を現代的アプローチで表現した「TAKACHIHO」など。2024年秋にKaitoの最新アルバム「collection」がフランス、パリに拠点をおくInFiné Musicからリリースされた。
Composer, DJ, and producer recognized for his deeply emotive and melancholic synth-driven sound. His music blends danceable rhythms with ambient soundscapes, earning him a dedicated global audience. After graduating from Tokyo College of Music High School, he studied Music Synthesis at Berklee College of Music. Watanabe has released numerous works on international labels, most notably under his Kaito alias on Germany’s KOMPAKT,
where he has released eight albums, including the acclaimed Everlasting and Special Life. He contributed “Get It By Your Hands” to the anime “Eureka Seven”, later reworked for its 2017 feature film.Watanabe has collaborated with the “WDR Orchestra” in Cologne and was the first Japanese artist to release on Derrick May’s Transmat Records with “Multiverse” in 2016. In recent years, he has continued to evolve his sound, releasing “Collection” on InFiné Music and further exploring immersive storytelling through electronic music.

■Keigo Julian Fukugaki■
デザイナー、クリエイティブコンサルタント、クリエイティブディレクター。2019年にインテリアデザイン誌の「40アンダー40」に選出される。建築デザイン、コミュニティデザインにおける専門知識と起業家としての経験を活かし、クライアントやプロジェクトにユニークな解決策と体験を構築するお手伝いをしています。
アメリカ生まれの日系アメリカ人。カリフォルニア州立ポリテクニック大学サンルイスオビスポ校で建築学を修了後、アメリカ、オーストリアで建築プロジェクトに携わった後、2011年に日本へ移住。インテリアデザイン会社「Makeshift」、アートホテルブランド「BnA Hotels」、コンサルティング会社「Anchorstar」など、複数のベンチャー企業の設立し、幅広い分野で活動を行っています。
I am a Designer, Creative Consultant and Creative Director chosen by Interior Design magazine’s “40 under 40” in 2019. I help clients, projects build truly unique solutions and
experiences by providing my expertise in architectural design, community design, and experience in entrepreneurship. I am a Japanese American born in the United States. After completing my studies in architecture at California State Polytechnical University of San Luis Obispo works on various high-profile architectural projects in US, Austria, and Japan. I helped found several ventures including Makeshift - and interior design firm, BnA Hotels - an Art Hotel Brand, and Anchorstar - a consulting agency

■BnA_WALL■
BnA_WALLは、東京日本橋にあるBnA HOTELが運営するアートホテルです。
ホテルだけではなく、制作/展示スペース、巨大壁画、カフェ/バー/ラウンジを併設し、「Play」「Work」「Life」「Creation」と幅広い活動を目的としたオルタナティブホテルです。
「変化を楽しむホテル」
施設のエントランスを開け、まず目を引くのがBnA_WALLを象徴する巨大壁画(WALL)です。
WALLはアーティストによって日々描き変えられ、タイミング次第では1階のラウンジより壁画の制作シーンをご覧いただくことが可能です。
完成した作品の展示だけではなく、アートホテルが変化していく過程をお楽しみください。
BnA HOTELは全客室がアート作品のアートホテルです。客室に絵を飾る/描くだけではなく、各客室ごとの床・壁・天井から家具に至るまでアーティストとこだわり抜いて作り上げる、世界でも類を見ないアプローチです。
「アートに泊まる、パトロンになる」
BnA HOTELでは、完成した客室に作品を展示するのではなく、空間そのものを一からアーティストと制作するアプローチをとっています。
床・壁・天井の形や素材、色を選ぶところから始まり、展示する作品、家具やカーテン、小物など、細部までアーティストと共に世界観を作り上げていくため、設計開始から完成まで2年を要する壮大なアートプロジェクトです。
必然的に、一つ一つのアートルームはアーティストごとに全く異なる空間作品となっています。
ご宿泊の際は、部屋に込められた作者の思考や想いに心を向けて浸ってみてください。その際に起こる自分の変化を楽しんでいただければと思います。
皆様がアートルームでより濃密な時間を過ごすためのサポートとなるような、体験ガイドやアートルームのナレーションもご用意しております。ぜひご活用ください。
また、宿泊費の一部がアートルームを制作したアーティストに還元される、パトロンシステムを採用しています。アーティストへの新しい応援の形を、是非楽しんでみてください。



