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ADAM USERS - 小松 K.M.D 久明氏



コンサートエンジニアとしてLUNA SEAなど日本を代表するロックバンドのライブサウンドを手がけてきた小松 K.M.D 久明氏。20代の頃から専用のリスニングルームを運営し、様々なジャンルの音楽を探求してきた小松氏に、ご自身のキャリア、ADAM Audioのモニターとの出会い、そして今後PAエンジニアを目指す方へのアドバイスなどを伺った。


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小松さんがこの業界に入ろうと思ったきっかけや、音楽的なバックグラウンドを教えていただけますか?


音楽を聴くようになったのは、父と兄の影響が大きいです。吉田拓郎やビートルズを聴き始めたのは兄の影響が大きかったと思います。父も非常に音楽好きで、中でもディキシーランドジャズが好きで、家ではジャズがいつも鳴っていました。とはいえ当時は私も若者でしたから、ロックやポップスなどにも興味がありました。そのうち兄が楽器を弾くようになり兄からベースを借りて弾くようになったのです。その頃、僕が好んで聴いていた音楽はウェザーリポートやジョン・コルトレーン、マイルスデイビスなどフュージョンやジャズを聴くようになっていました。高校を卒業して音響技術専門学校に入ったのですが、たくさんの音楽を聴くために学校の近くにある港区図書館にて、アナログレコードを左のAからZまで全部聴く時期がありました。しかも好きなジャンルだけではなく、ジャズ、ロック、クラシック、J-POPなど毎日4枚ずつ借りてきて音楽を聴きまくりました。これを2年間ずっとやっていました(笑)。私の音楽のバックグラウンドは、大部分がこの時期に培われたといえるんじゃないでしょうか!?と言っても過言じゃないと思います。


それからしばらくして、カントリー音楽を好きになるのですが、カントリーってすごくメロディーがきれいで、30歳になった頃に(カントリーの聖地)ナッシュビルにも行きました。アメリカ西海岸や東海岸など、音楽は実際にその土地で聴く事も大切にしています。とにかく沢山の音楽を聴いていました。今でもヒット曲だけでなく、サブスクサービスを使って沢山の音楽を聴き続けています。


1997年に独立され、Oasis Sound Design Inc.を設立されることになった経緯はどのようなものだったのでしょうか?


20代の後半、エンジニア仲間で、現在のOasis Sound Design Inc.の代表の金森氏と一緒にコンサートツアーを回っていた頃です。音楽を聴く部屋が欲しいという話題になり、二人で資金を出し合って目黒で防音環境の部屋を借りました。そこにスピーカーを置いて運営をしていました。リスニングルームで音楽を聴き込み、プロジェクターでライブ映像を観たりと数年間やっていました。やはり耳がすごい鍛えられたと思います。数年後に金森氏と二人でいざ会社を作ろうという話になり、32歳でこのリスニングルームからOasis Sound Design Inc.という会社を設立しました。目黒のマンションから始まり数年後に、理想のリハーサルスタジオが欲しいという事になり、コントロールルームも完備したスタジオを川崎に作りました。木下モニターのRM-7VとSSL Gシリーズを導入したスタジオは、最高のリハーサル環境でした。


今回、ADAM Audio T8Vを導入いただきました。これまでにT5VT7Vも導入いただいています。小松さんがADAM Audioを選んだ理由は何ですか?


時代が変わり、スタジオのコントロールルームのコンパクト化や、ボーカルブースも作る事になり、その流れでスタジオ機材も見直され、メインスピーカーRM7Vを惜しくも手放す事になりました。これまで自分の耳を育ててくれたスピーカーだったので非常に残念でした。その後、色々とスピーカーを探しましたが、あれ以上の環境はもうないだろうと思って諦めていました。それからさらに数年経過し、やはり気持ち良く音楽を聴くスピーカーが欲しいと思い始めた頃に、ちょうどRock oN Companyさんのコラムを書くことになり、度々Rock oNさんのお店に足を運ぶようになりました。Rock oNさんにはたくさんのスピーカーが並んでいて、色々な機種を聴いてみるようになったのですが、そこで目についたのがADAMのスピーカーだったんです。試聴の際はいつも自分のリファレンス音源を持ち歩いているのですが、初めて聴いてみたら「ADAMすごくない!?」と(笑)。

その時はもう自分で音楽を聴くためのラージスピーカーを持ったりすることは出来ないと諦めていて、せめて自分が大好きなカントリーミュージックを気持ち良く聴けるスピーカーを探していました。数ヶ月掛けて、ADAM T7Vとそれ以外のスピーカーを聴き比べて、最終的に購入したのがADAM T7Vでした。その後すぐに自宅用にT5V、そして仕事用にT8Vを続けて購入しました。


作られた音楽のイメージや真意をちゃんと表現してくれる ... この価格でこの音、大げさではなく奇跡的なスピーカーだと思っています

ADAMを聴いた際に感じた印象や感想を教えてください。


Tシリーズ以外のADAMも全部聴きましたが、まず、ドラムを聴いているときのリズムのタイトさ、速さ、正確さに優れていると思いました。正確というのは、自分が思っている音のイメージにすごく似ているという事です。


あと、一番大事なのはアメリカの音楽がちゃんとアメリカの音がしている。カントリーミュージックがちゃんとその国のカントリーの音になっている。つまり、作られた音楽のイメージや真意をちゃんと表現してくれる。これが他のスピーカーにはなかった点です。この価格でこの音、大げさではなく奇跡的なスピーカーだと思っています。


これまでのご経験の中で、モニタリングに関連した問題で一番よく遭遇した事は何ですか?


仕事では、大きな会場からライブハウスまでいろんなシチュエーションで音をミキシングしています。ミックスする際の音のイメージは、今まで自分が多くの音楽を聴いてきたサウンドイメージの引き出しから持ってくることもあれば、スタジオリハーサルで感じたサウンドを基にして作ることもあります。


コンサート会場でミキシングしたステレオミックスを録音しておいて、公演後に部屋のスピーカーで聴いたり、ヘッドフォンでチェックしたりしますが、当たり前のことながら、コンサート会場のように身体を揺らす迫力のある低音感はありません。ただし、自分がミキシングしたバランスや音色はそのステレオミックスに録音されています。


バンドメンバーやプロダクションチームはコンサート後にそれぞれの環境でその録音を聴きますので、彼等のイメージとその録音された音に違いが有りすぎると、後に問題視されます。特にドラムのバスドラとベースの低音感です。これらをコンサート会場からメンバーのリスニング環境まで想定しながら、一貫したクオリティに仕上げるのは経験値が必要なのと、そこまでイメージしているか!?ですね。僕の場合は、コンサート会場のスピーカーチューニングはメンバーのリスニング環境までイメージしながらチューニングしています。


コンサートのPAでのミキシングと、スタジオでのミキシングについて、手法や聴き方に違いはあるのでしょうか?


PAはその場の音をお客さんと共有します、ステージ上でのメンバーの意図がオーディエンスに伝わり、コンサートが最高に盛り上がることが一番大事ですよね!なので、細かいバランスも大切ですが、グルーブと瞬間のインパクトを大切にしています。多少荒っぽくなったとしても、それはOKだと思います。一方、レコーディングは時間をかけてアーティストの楽曲がCDになったり、配信の音源になりますので何回もミキシングして最良の音楽パッケージを作っていきます。


オアシススタジオホームでは数年レコーディング・エンジニアも担当しましたが、コンサートスケジュールが並行していたこともあり、身体的に辛くなったので専任のレコーディング・エンジニアにバトンタッチをしました。


小松さんは洗足学園音楽大学にて長年講師としてもご活躍されており、授業の一環としてモニタースピーカーでリスニングすることの重要性を伝えられていますが、どのような狙いがあるのでしょうか?


学生には週に2回ほど学内の防音室で音楽を聴く時間を作っており、そのスピーカーにADAM T7Vを使っています。サイズの違うT5VやT8Vを並べて、ウーファー口径の違いによる音のレンジの広さを体験してもらったりしています。エンジニアを目指す若者たちには、ヘッドフォンやイヤモニターだけではなく、スピーカーで音楽を聴くことを意識してもらいたいですね。特にPAエンジニアを目指す人にとっては、当たり前のことながら、コンサートではメインスピーカーから出た音が空気を伝って観客に届くので、その為にもスピーカーで音を聴くことに慣れるのが重要だと学生には教えています。


今後は音楽業界を目指す若者はもちろんですが、それだけではなく普通に音楽ファンの人達にもっといい環境で音楽を聴いてもらう事で、「自分の好きなアーティストのCDってこんなに良い音だったの!?」「良い環境で聴くとこんなに音楽って気持ち良く聴こえるっ!」というような気づきを提供できればと思っています。そのような体験をしてもらうために、日本国内の音楽リスニング環境を向上する為の普及活動を今後始めたいと思っています。 


色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


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【小松 K.M.D 久明 氏 プロフィール 】

1984年(財)ヤマハ音楽振興会入社、コンサートミキシングエンジニアとしてのキャリアをスタートし、1997年にOasis Sound Design Inc.を設立、これまで数多くのアーティストのコンサートミキシング、コンサートのプラン及びサウンド・デザインを手掛け、現在に至るまで年間100本以上のコンサートにエンジニアとして携わっている他、洗足学園音楽大学の客員教授、講師を務めており、未来の音楽業界の貴重な人材を教育することにも力を入れている。これまで担当した主なアーティストは、石野真子、大黒摩季、昆夏美、河村隆一、手蔦葵、吉澤嘉代子、良知真次、AUTRIBE、BAROQUE、INORAN、DIAURA、Muddy Apes、LUNA SEA、Sound Schedule、Tourbillon、SHAZNA、彩冷える、オーロラタクト、石井一孝など多数。



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